【書評】読む・聞く、まとめる、言葉にする(松尾 美里)──言語化力を高める4つの習慣

メモ術

言語化力は才能ではなく習慣で伸ばせる。本書『読む・聞く、まとめる、言葉にする』では、思考を整理し伝える力を高める4つのスキルを実践的に解説。考えをうまく言葉にできない人におすすめの一冊です。

「伝えたいことがあるのに、うまく言葉にできない」
そんなもどかしさを感じたことはありませんか。話そうとすると頭が真っ白になったり、書こうとすると何から手をつけていいかわからなくなったり──言語化の悩みは多くの人が抱えています。

松尾美里さんの『読む・聞く、まとめる、言葉にする』は、言語化力を才能ではなく習慣で伸ばせるスキルとして捉え直し、その具体的な方法を4つのステップに分けて解説した一冊です。
著者は、本の要約サービス「flier」で培った経験をもとに、「誰に、何を、どのように伝えるのか」という軸を持つことの大切さを一貫して伝えています。

言語化力は、「言葉にする」場面だけを意識しても、なかなか伸びにくいものです。
本書では、「読む・聞く・まとめる・言葉にする」という4つのスキルを、一連の習慣として捉えることの大切さが、繰り返し語られています。
そして、言語化の上手い人ほど、これらのスキルを日常の中で習慣的に磨いていることが多いといいます。
ここからは、実際に取り組んでみて印象に残ったポイントを、各スキルごとに紹介します。

こんな人におすすめ
  • 伝えたいことがあるのに、うまく言葉にできないと感じている
  • 会話や文章がまとまらず、論点がずれてしまう
  • 本や人の話を聞いても、うまく理解できない
  • 伝える力やコミュニケーション力を高めたい
  • 言語化を「習慣」として独学で身につけたい

言語化力を高める4つの習慣と実践ポイント

① 読むスキル

良い言語化のためには、まず「インプット」の段階で目的意識が重要だと本書は述べています。
具体的には、「誰に伝えるのか」「どの媒体(メディア)を使うのか」「どのような結果を得たいのか」を明確にすること。
この軸があることで、インプットの質が大きく変わります。

著者は、インプットの質を判断する基準として、

  • アウトプットにつながるか
  • 独自性や希少性があるか

という2点を挙げています。

また、読む際に意識しているポイントとして、次の2つが紹介されています。
1つ目は、カバーや帯、目次から本全体の「見取り図」をつくり、構造を頭に入れてから読むこと。
2つ目は、問いを持ち、「宝探し」をする感覚で読み進めることです。

📌 実践レビュー①

実践例:読む前にカバー・帯・目次を確認し、全体の見取り図をメモに書いてから読み始めた。

良かった点:あらかじめ描いた全体像と本書の内容との差を自然と意識できるため、話の構造が頭に入りやすかった。

気になった点:見取り図づくりにこだわりすぎると、そこで時間を取られてしまう。多少間違っていても気にしない、くらいの感覚が大切だと感じた。

② 聞くスキル

著者はインタビューの機会も多く、その経験から「聞く力」を高めるために意識しているポイントを紹介しています。

特に重要だとされているのは、次の3つです。

  1. インプットの質を上げるための準備
     ・下調べ・リサーチをしておく
     ・問いを持って臨む
  2. 積極的自己開示
  3. 「共感」と「俯瞰」を同時に持つこと

さらに、聞くうえでは「話しやすい空気づくり」も欠かせないと述べています。
先入観を持たず、相手に心から興味を向ける姿勢が大切であり、これはロジャースの提唱する「傾聴の三原則」──

  1. 共感的理解
  2. 無条件の肯定的関心
  3. 自己一致
    ──にも通じる考え方だと感じました。

📌 実践レビュー②

実践例:会議や講演の前に、「目的は何か」「どんな話になりそうか」を手帳に書き出し、必要そうな基礎知識を事前に確認してから臨んでみた。

良かった点:目的の軸がはっきりしているため、論点がズレにくく「話題の関連性」を判断しやすく、重要な情報が素通りしにくくなった。

気になった点:実際はシミュレーション通りに進まないことも多い。想定と違った部分や引っかかった点を、その場や後から書き残しておくと、次により活かせると感じた。

③ まとめるスキル

本書では、「まとめる力」はインプットとアウトプットをつなぐ重要なスキルだと述べられています。
その中心にあるのが、読んだ内容や聞いた内容に対してメモを取る習慣です。

著者が特に強調しているのは、
事実と解釈を分けてメモすること

  • 事実:読んだこと・聞いたこと
  • 解釈:自分の主観や意見、感じたこと

解釈を深めるためには、「why(なぜ?)」「how(どういうこと?)」という問いを持ち、物事の本質を掘り下げていくことが勧められています。

次に重要なのが、メモした内容をどう整理するか
ここで著者が提案しているのが、制限・制約を使って削るという発想です。

具体的には、

  • 文字数を制限する
  • 書く時間を制限する(例:4000〜4500字を10分以内)

また、文章を組み立てる際の参考として、次のような「型」も紹介されています。

  • 結論 → 理由 → 結論
  • 提起 → 前提 → 意見
  • 理想 → 課題(現状) → 解決策

📌 実践レビュー

実践例
 記事を書く際、各見出しごとに「文字数1000字・時間20分」という制限を設定して整理した。

良かった点
 インプットの段階では「あれもこれも大事」と感じていた内容が、
 誰に・何を伝えるかという目的に照らすことで、自然と削れるようになった。
 制限があることで無駄に悩む時間も減り、「とりあえず形にする」まで持っていける。

気になった点
 制限を意識しすぎると、書きたいことを切り捨てる感覚に少し抵抗があった。
 自分のペースを理解したうえで、最初はハードル低めの制限でもいいと感じた。
 一方で、時間をかけたわりに完成度が大きく変わらないことも多く、
 「完璧を目指さなくていい」と割り切る意識の大切さにも気づいた。

④ 言葉にするスキル

「言葉にする力」が高まることで、自分の思考や本心に気づけるようになるだけでなく、他者からの信頼や応援を得やすくなると本書では述べられています。
結果として、周囲や組織、チームが目標に向かって進む力も高まっていく、という位置づけです。

著者によると、言語化がうまい人の多くは「書く習慣」を持っています。
自分の考えを文章として整理するトレーニングを日常的に行うことで、「何を伝えたいのか」が自然と明確になっていくのです。

本書で紹介されている主なトレーニングは次の3つです。

「一言で言うと?」トレーニング
伝えたいこと・相手・文字数制限を意識し、要点を一言でまとめる練習。

完コピトレーニング
良いと感じた文章や表現をそのまま書き写したり、実際に使ってみることで、言い回しや構造を体に覚えさせる。

語彙力アップトレーニング
単語の意味を調べて正しく使うこと。多様な人や作品に触れ、広がった語彙を意識的にアウトプットに使っていく。

そして、話していて「わかりやすい」と感じる言語化の共通点は、「what(何を伝えたいのか)」が明確であること
不器用であっても、相手に伝わるように工夫し続ける姿勢や、言葉と向き合う態度そのものが、伝わる言語化につながっていきます。

📌 実践レビュー

実践例
 本の内容を誰かに紹介する場面を想定し、「この本を一言で言うと?」と自分に問いながら、話す内容を組み立ててみた。
 本書を一言でまとめるなら、「本の要約サービスflierで働く松尾美里さんの、言語化スキルとその実践ポイントが紹介されている本」といった入りを、ひとまずの仮置きとして考えた。

良かった点
 一言で言おうとすると、自然と話の軸がはっきりし、内容が構造的に整理される感覚があった。話す前に頭の中で迷う時間が減り、「何から話せばいいか」が明確になる。

気になった点
 一言にまとめるのは思った以上に難しく、表現が浅く感じることもあった。ただ、その違和感こそが「まだ整理しきれていない部分」だと気づくきっかけにもなった。

要約・まとめ

言語化力は「才能」ではなく「習慣」で伸ばせる。

本書で紹介されている「言語化力を高める4つの習慣」は、次の通りです。

読むスキル
 誰に・何を・どのように伝えるかを意識し、アウトプット前提で情報を取捨選択する

✅聞くスキル
 準備・問い・共感を大切にし、相手の話を深く理解するためのインプットを行う

まとめるスキル
 事実と解釈を分けてメモし、制限を設けて思考と情報を整理する

言葉にするスキル
 書く習慣を通して「何を伝えたいのか」を明確にし、伝わる表現へと磨いていく

本書『読む・聞く、まとめる、言葉にする』を通して感じたのは、言語化力とは特別な才能ではなく、日々の習慣の積み重ねによって育てていける力だということです。

これら4つのスキルは、それぞれ独立しているようでいて、実はひと続きのプロセスとしてつながっています。
どれか一つだけを鍛えるのではなく、「読む → 聞く → まとめる → 言葉にする」という流れを意識して習慣化することが、伝わる言語化への近道なのだと感じました。

また本書では、アリストテレスが説いた「説得の三要素」──
話し手の人柄(エートス)・聞き手の心理状態(パトス)・話される内容の論理性(ロゴス)
にも触れられています。
このうち、聞き手の心理状態はコントロールできませんが、話し手の人柄と内容の論理性は、日々の積み重ねで磨いていくことができます。

本書で紹介されている習慣は、まさにこの2つを育てるための実践的なヒントでした。

「考えはあるのに、うまく言葉にできない」
「何を伝えたいのか、自分でもはっきりしない」

そんな悩みを感じている人にとって、この本は“言語化の近道”を教えてくれる一冊だと思います。
言語化力を高めたいと感じた今この瞬間から、できるところを一つずつ習慣にしていく。
その第一歩を後押ししてくれる、前向きな読後感のある本でした。

書籍情報

【書籍名】読む・聞く、まとめる、言葉にする

【著者名】松尾 美里

【出版社】フォレスト出版

【出版日】2024/6/21

【項数】240ページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました