【書評】『雑談の一流、二流、三流』(著)桐生稔──会話が続く3つの技術と実践ポイント

会話

雑談が苦手で、何を話せばいいかわからない──
会話のきっかけがつかめず、沈黙が気まずい──

そんな悩みを抱えていた私が出会ったのが、桐生稔さんの『雑談の一流、二流、三流』です。

著者は、左遷寸前の営業マンからトップ営業マンへと成長した人物。その劇的な変化のきっかけが「雑談力」だったといいます。まさに、“雑談で人生が変わる”ことを体現した人です。

本書では、雑談の違いを「三流・二流・一流」の例で示しながら、シーン別に50以上の実践的なテクニックを紹介しています。
読んでいく中で私は、雑談を 「始め方」「広げ方」「終わり方」 の3つのステップに整理すると、より実践しやすいと感じました。

本書の章構成は以下のとおりです。

  • 第1章:雑談の始め方
  • 第2章:話の広げ方
  • 第3章:聞き方とリアクション
  • 第4章:雑談の盛り上げ方
  • 第5章:相手の懐に入る方法
  • 第6章:好印象の残し方
  • 第7章:雑談がうまい人の心構え

この内容を「始め方」「広げ方」「終わり方」の3ステップとして読むことで、日常の会話や仕事の雑談にすぐ応用できるスキルが身につきます。

こんな人におすすめ
  • 雑談が苦手で、会話のきっかけがつかめない人
  • 仕事や営業で、初対面の相手と距離を縮めたい人
  • 沈黙や気まずい空気を避け、自然に話を広げたい人

雑談の一流になるためのポイント3選

① 雑談の始め方:自分から話しかける人になる

雑談の第一歩は、「話しかけられるのを待つ」ではなく、自分から話しかけることです。
そのためにはまず、「話しかけやすい表情・雰囲気」をつくることが欠かせません。

著者は、ミッキーのような笑顔を例に挙げています。どんなに話術があっても、無表情や不機嫌そうな顔では心の扉は開きません。

さらに本書で印象的なのが、**「あいさつ+ツープラス」**というテクニック。

例:

  • 「おはようございます(あいさつ)」
  • 「今日は暑いですね(プラス①)」
  • 「〇〇さんは暑さに強い方ですか?(プラス②・質問)」

このように、あいさつ+一言+質問などを組み合わせることで、自然に会話が広がります。

この「ツープラス」は特に決まりはありませんが、相手の“いま”に焦点を当てるとよりスムーズです。

  • 「おはようございます。なんだか嬉しそうですね。いいことあったんですか?」
  • 「こんにちは。奇遇ですね。〇〇さんもお買い物ですか?」

はじめの一声に迷う方は、この「あいさつ+ツープラス」をぜひ試してみてください。

② 雑談の広げ方──話す力と聞く力を磨く

雑談を広げるには、**「話す力」と「聞く力」**の両方が欠かせません。


▶ 話す力:バトンを回す

人の集中力はおよそ30秒。
だからこそ、自分の話は30秒以内にいったん区切り、相手に話を振るのが理想です。

本書では「一人質問」というテクニックも紹介されています。

  • 「〇〇って意外とハマりますよね?」
  • 「そんなことってありますよね?」

これはテレビ通販でもよく使われる、“問いかけ風のひとりごと”。
会話しているように見せながら自分の話を続けられる便利な技です。

さらに話題選びについて。
よく「木戸に立てかけし衣食住」と言われますが、多すぎて迷ってしまうことも。
そこで著者がおすすめする鉄板ネタは、誰もが日常的に関心を持つ5つのことです。

  • 食べること
  • 動くこと(運動・移動など)
  • 働くこと
  • お金を使うこと
  • 寝ること

これらは誰にでも関係があり、質問もしやすいテーマ。
雑談に自信がない人ほど、この「5つのネタ」を用意しておくだけで安心感が生まれます。
また、自分の経験を少し開示してから相手に話題を振ると、会話が自然に広がります。


▶ 聞く力:承認する

相手の話をうまく受け止めて広げるには、**「聞いている姿勢」と「リアクション」**が欠かせません。

  • 相手に体を向け、「聞いていますよ」と態度で示す
  • 感情に合わせて、うなずき・相槌・感嘆の言葉を添える
  • 否定せず、相手の努力や変化に着目して“承認”する

たとえば、新人が「契約が取れなかった」と落ち込んでいたとき。
「契約が取れなかったら焦るよねー、その気持ち分かるよ。でも以前は一人で営業に行けなかったのに、今はできるようになってる。少しずつ成長してるし大丈夫。」
と伝えるだけで、相手は前向きな気持ちになれます。

場面が違っても、聞く姿勢・聞いている合図・承認の言葉を意識するだけで、相手の表情が明るくなり、こちらもうれしい気持ちになります。


③ 雑談の終わり方:「また話したい人」になる一言が一流

雑談のゴールは、「うまく話す」ことではなく、「また話したい」と思わせることです。

そのために必要なのは3つ:

  • 話題の再確認:「さっきの話、私も共感しました」などで、聞いていたことを振り返りこの人はしっかり話を聞いてくれる人だと示す。
  • 伏線を残す:「すぐに教えていただいたお店に行ってみます。」「次は○○についても話しましょう。」など、“続き”が気になる一言で終えると、次の会話が自然に始めやすくなります。

雑談の終わり方ひとつで、相手の心に残る度合いは大きく変わります。
去り際に小さな工夫をすることが、「また会いたい」と思わせる秘訣です。

要約・まとめ

始め方:あいさつ+相手の今に焦点を当てたツープラスで自然に会話をスタート

広げ方:軽く自己開示してからパス+リアクションと承認で相手を主役に

終わり方:話題を振り返り、伏線を残して“また会いたい人”に

雑談がうまい人は、特別な才能や話術を持っているわけではありません。
相手への関心、聞く姿勢、少しの工夫──それだけで雑談はぐっと心地よくなります。

この本を読んで、私は「雑談が怖いもの」から「人間関係を築く大切なツール」へと捉え方が変わりました。
「沈黙が怖い」「話題が思いつかない」と悩んでいる人こそ、一流の雑談を身につけてみてください。

雑談が変われば、人間関係が変わる。
本書は、その第一歩を後押ししてくれる一冊です。

書籍情報

【書籍名】雑談の一流、二流、三流

【著者名】桐生 稔

【出版社】明日香出版社

【出版日】2020/3/5

【項数】220ページ

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