【書評】『子どもには、どんどん失敗させなさい』(著)水野 達郎──失敗させる勇気が子どもを自立に導く

子育て

「失敗しないように先回りしてしまう」「つい口を出してしまう」――子育て中の親なら誰もが心当たりのある悩みかもしれません。
本書『子どもには、どんどん失敗させなさい』(著:水野達朗)は、子どもの自信自立心を育てるために、親が“あえて見守ることの大切さ”を説く一冊です。

著者は、家庭教育支援センター「ペアレンツキャンプ」の代表理事であり、15年以上にわたって家庭教育アドバイザーとして親子の相談に応じてきました。その経験をもとに、本書では「子どもの失敗をどう受け止めるか」「親の関わり方がどう影響するか」といった視点から、子育てに必要な考え方を5章に分けて解説しています。

  • 第一章では「どんな子に育てたいか」という子育ての目標を立てること
  • 第二章では親の価値観の押し付けが及ぼす影響
  • 第三章では自信・自立を家庭でどう育てるか
  • 第四章では勉強への前向きな姿勢を引き出す親の声かけ
  • 第五章では日々の生活でできる実践的な関わり方

子どもを信じ、挑戦や失敗をポジティブに受け止められる親であるために、どんな声かけや関わり方ができるか――そのヒントが詰まった一冊です。

本記事では、そんな本書の中から特に印象的だった 「自信」と「自立」を育む子育てのポイントを3つ に絞ってご紹介します。

こんな人におすすめ
  • 子どもが自分で何もできず、いつも手を出してしまう
  • つい、子どもの失敗にイライラして怒ってしまう
  • 子育てに漠然とした不安や焦りがある

自信・自立を育む子育てのポイント3選

① 子育ての「目標」を立てる

本書では、子育ての究極の目標として

「もし親である自分が明日死んでも、子どもが一人で生きていけるようにしておくこと」

と語られています。

もちろん、ここまで極端な形でなくても、「親の目の届かないところでも、自分で考えて行動できる子に育ってほしい」といった中長期的な視点を持つことが、日々の子育ての軸になります。

子どもの思わぬ行動に戸惑ったときや、自分の感情に振り回されそうなときこそ、「この子にどんな人生を歩んでほしいか」「どんな大人になってほしいか」を思い出すことが大切です。

先を見据えた“子育ての目標”は、親子の歩む道を照らす道しるべとなる――本書はそんな視点を気づかせてくれます。

② 自立を育むために

まず、自立を促すうえで大切なのは、**子どもの話に丁寧に耳を傾ける「聴く姿勢」**です。
ただ話を聞くだけでなく、表情や体の向きで関心を示し、否定せずに受け止めることで、子どもは安心して自分の気持ちを表現できるようになります。

さらに、子どもの言葉を**繰り返したり言い換えたり(反復)**することで共感が伝わり、「どう思った?」「これからどうしたい?」といった質問を添えると、自分で考える力も育ちます
こうした“アクティブリスニング”の姿勢は、子どもの自己肯定感や思考力の土台となります。

また、子どもの行動に対しては、「すごいね」「えらいね」といった評価よりも、「ありがとう」「助かるよ」などの感謝を伝える言葉が効果的です。
さらに、命令や指示ではなく、「私はこう思ったよ」「お父さんはちょっと心配なんだ」といった**アイメッセージ(自分の気持ちを主語にする伝え方)**を使うことで、子どもにプレッシャーをかけずに思いを届けることができます。

③ 自立を育むために控えたいこと

反対に、自立の芽を摘んでしまいやすい関わり方として注意したいのが、**親の価値観の押し付けや、子どもの失敗を避けさせる“先回り”**です。

たとえば「男の子なんだから青を選びなさい」「これは辛いからやめておきなさい」といった声かけは、子どもの選択や経験の機会を奪うことにつながります。
たとえ悪意がなくても、子どもは「否定された」と感じやすく、結果として自信やチャレンジ精神が育ちにくくなるのです。

もちろん、年齢に合わないことや明らかに危険なことには親の介入も必要です。
ただし、安全な範囲での失敗や試行錯誤は、子どもの「レジリエンス(回復力)」を育てる貴重な経験になります。

親には、「失敗させる勇気」が求められている――それが本書の強いメッセージのひとつです。

まとめ

子育ての目標を持ち、焦らず自信を持って向き合う

子どもの気持ちに耳を傾けることから始める

急を要さないことには、あえて手を出さず見守る勇気を持つ

子育ての悩みは尽きませんが、本書はそんな不安や迷いを受け止めつつ、「子どもを信じて見守る」という基本に立ち返らせてくれる一冊でした。

著者の水野達朗さんは、「親の不安は子育ての指針を再確認することで和らぐ」と述べています。
子どもの失敗に過度に反応してしまうのは、親自身が「どう育てればいいのか」という軸を見失っているときかもしれません。

だからこそ、まずは親が「どんな子に育てたいか」という目標を持ち、その実現に向けて日々の関わり方を見つめ直すこと。そして、失敗も含めて子どもを信じ、成長のチャンスととらえること――。

本書を通じて、私自身もあらためて子育てを見直す機会をもらいました。
親の思いとは裏腹に、子どもはなかなか思うように動いてくれないものです。

でも、「子育てとは、短距離ではなく長距離を走るもの」。
そう考え直してからは、目の前の小さな困難にも、少しずつ前向きに向き合えるようになりました。

子どもの未来を信じて、あたたかく、でもしっかりと「背中を押せる親」でありたい――
そんな気持ちにさせてくれる一冊です。

書籍情報

【書籍名】子どもには、どんどん失敗させなさい わが子が12歳になるまでに知っておきたい「自信あふれる子」の育て方

【著者名】水野達朗

【出版社】PHP研究所

【出版日】2019/3/22

【項数】192ページ

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